のばらの読書録

日々読んだ本の記録をしていきます

『狐付きと狐落とし』中村禎里(2020年)第一部

 今回は中村禎里『狐付きと狐落とし』の第一部を読みました。

 最近なんとなく狐付きに興味がわき、図書館で手に取った本なのですが、結構厚みと文量があり、内容もしっかりした本で、延長して4週間借りたのに第一部しか読めませんでした。続きは気になるものの、いったん返さないといけないので返してきました。今度もう一回借りるか、自分で買うかしようと思います。

 さて、第一部は「狐と寺社ところどころ」と題され、中世~近世から日本各地で伝えられる狐(と狸)にまつわる伝承やそれに関係する寺社について、豊富な資料から由来などが考察されています。

 扱われているのは、那須殺生石になったとされる玉藻の前を祀る「玉藻稲荷」や、茨城・竜ケ崎の「女化稲荷」、安倍晴明の母とされる葛葉狐の伝承がある大阪の「葛の葉稲荷」、義経千本桜の「源九郎狐」の話や兵庫・姫路の「長壁神社」の狐、物ぐさ太郎の話のバリエーションで狐女房のものがあったことなど。

 私はこういった話題に興味はあるものの、知識はまるでなかったので、全然知らないことばかり出てきて読むのが大変でした。日本史や地理、文学作品などについていろいろと調べながら読むのが面白かったです。「人間の女性に化けた狐が人間の男性の妻になり子どもを産んで、子どもと昼寝してるときなんかにうっかり尻尾を出して正体がばれて姿を消す」みたいな話が結構ポピュラーな型の一つなんだなあと思いました。関東ではどっちかというと人間と関係の良い狐の話が多くて、関西の狐の方が(特に古い時代は)邪悪だったというのは面白いですね。人間食い殺したりとか。そして、狐の神社と聞くとやはり稲荷社を連想しますが、必ずしもそれだけではなく、稲荷以外の神社(例:長壁神社など)や寺と狐が結びつくこともあったというのも意外でした。蛇=楠(くす)→葛(くず)=狐というつながりで蛇の話だったものが狐の話になったとか、そのあたりも興味深いです。

 ただ、第一部で扱われていたのは主に人間に化ける狐の話であって、もともと気になっていた「狐付き」の話とはちょっと違ったので、やっぱり本の後ろの方も追々読みたいですね。

 ひとまず次回は図書館で借りた別の本か、部屋に積んである本のどれかになると思います。